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欠けから蘇る美:初期伊万里天目形染付草文盃の金継ぎ復元

復元修復 炭蒔き 金蒔絵

こちらは、初期伊万里染付草文天目形茶碗の陶片を盃に創作復元した作品です。
元の陶片は、天目茶碗が胴の上半分近くが大きく欠損している状態でしたが、日本の伝統技術である「金継ぎ」を用いて、単に修復するだけでなく、欠損を活かした新たな姿へと生まれ変わりました。

🌟 復元と金継ぎのプロセス

この盃の修復は、高度な技術と手間を要するものでした。

  1. 欠損部分の処理と復元:
    • まず、大きく欠けていた口縁部分を安定させるため、欠損部分の周りを丁寧に削り落としました。
    • 次に、残された陶片に合わせ、樹脂を用いて失われた口縁部分を形成し、盃の形を復元しました。
  2. 炭蒔きと金蒔絵:
    • 復元した口縁部の下地として、独特の質感を持つ炭蒔きを施しました。
    • その上に、金の粉を用いる金蒔絵の技法で繊細な装飾を描き、欠けを「景色」として昇華させています。金のラインやドットが、深みのある天目釉と内側の染付のクラック(貫入)模様を美しく引き立てています。

🎨 作品の魅力

  • 内側の景色(ypf_81202.jpg):内側には、初期伊万里らしい素朴で力強い染付の草文が見えます。また、白地の貫入(ひび模様)と、それを囲む漆黒の天目釉、そして修復跡の金が三位一体となり、劇的なコントラストを生み出しています。
  • 底の景色(ypf_81206.jpg):高台(底)の周りにも金継ぎによる補修跡が施され、盃全体に物語性を持たせています。

この盃は、初期伊万里の歴史的価値と、金継ぎという日本の美意識が見事に融合した、まさに「復元修復の芸術品」と言えるでしょう。欠損部分を隠すのではなく、むしろ際立たせることで、時を超えて受け継がれる美の価値を教えてくれます。

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