


寸法:長径約12.2cm×短径約11.3cm 高さ約7.3cm
重さ:約242g
修復:復元修復 金継ぎ・金銀蒔絵
見込みには、椿か牡丹と見られる花文が描かれており、そのわずかに残された意匠を生かすために復元を試みた作品です。胴まわりには松の連鎖模様が施されていた痕跡が見られたため、欠損部分には黒と赤のグラデーションで下地を作り、そこへ金銀の蒔絵を重ねて松の連鎖を表現しました。
口縁部はほとんど失われていましたが、陶片に宿るわずかな手がかりをもとに往時の姿を想像し、甦らせることで初期伊万里の茶碗が持つ風情を現代に映し出しています。
青磁がかった釉薬には貫入が入り、やや低火度で焼かれた柔らかな質感が、初期伊万里ならではの素朴かつ幽玄な趣を漂わせています。欠損を補い、金銀の輝きを纏って蘇ったこの茶碗は、単なる器を超え、時代の美意識と再生の物語を映す一碗といえるでしょう。